Tuesday, September 1, 2020

イノリ島②「ブタのケーキ屋さん」★★★

 


 ピコは、(はっ)(とう)()ブタのお(かあ)さんで、ケーキ()さん。今日(きょう)(あさ)から(おお)(いそが)し。

()()きると、すぐにケーキを(つく)りはじめ(たまご)()って、クリームを()、スポンジを()。そうしていると、()どもたちが()きてきて、「ママ、おなかがすいた」と()てくる。(いそ)いで(あさ)ごはんの(よう)()をしたら、()どもたちが()べている(あいだ)(せん)(たく)をする。()どもたちに(ふく)()せ、(よう)()(えん)のバスに()せると、ようやく()(ぶん)(あさ)(はん)。それから、ケーキを(なら)べ、ケースを(みが)いて、(そう)()をしてから(みせ)()ける。

――よかった。今日(きょう)10()開店(かいてん)できた――

「いらっしゃいませ!」

「おはよう。今日(きょう)もいい(てん)()ね」

「あ、メイおばあさん。いつもありがとうございます!」

「この(あいだ)のクッキー、とってもおいしかったわよ。今日(きょう)のおすすめは、(なに)?」

「そうですね。こちらのモンブランはいかがですか?」

「あら、おいしそう。じゃ、それを2つ」

「ありがとうございます!」

今日(きょう)はこれから()(しょ)(かん)(ほん)(かえ)しに()くの」

「いいですね。ゴリラおじいさん、(あま)(もの)(だい)()です。ふふふ」

 ケーキをお(きゃく)さんにわたすとき、ピコはとってもうれしい()()ちになる。

 ピコがこの(ちい)さなケーキ()(はじ)めたのは、(ねん)(まえ)だ。(しゅ)(じん)のボーノは(りょう)()をしていて()(なか)()かけて(ひる)()ぎに(かえ)ってくる。しかし、たまに(とお)(りょう)()くときは(いっ)(げつ)(かえ)ってこない。それで、ピコはさびしいとき、よくケーキを()いた。そして、(とも)だちや(きん)(じょ)をうちに()んでパーティー(ひら)いた。みんなに「おいしい!」とほめられると、うれしくて、どんどん(あたら)しいケーキの(つく)(かた)(おぼ)えていった。

 ある()ボーノ

「そんなにケーキ(づく)りが()きなら、ケーキ()でも(ひら)いたらどう?」

()てきたそのときは「そんなの、無理(むり)よ」と()ったけど、そのあとじっくり(かんが)えて、がんばってやってみることにした。(ちい)(みせ)ならひとりでできるし、(きん)(じょ)()んでいる(はは)()(つだ)()たからだ。

 はじめは、やっぱり(たい)(へん)だった。けど、(とも)だちや(きん)(じょ)が「あそこに(あたら)しくできたケーキ()さん、とってもおいしいのよ」といろいろなところで()ってくれた。そのおかげで、だんだんお(きゃく)さんが()えていった。(いそが)しくなったけど、(まい)(にち)とても(たの)しかった。

 でも、()どもが()まれてからは(ちが)()どもの()()をしながら、ケーキを(つく)るのは(おも)っていたより(たい)(へん)だった。()(ごと)(ちゅう)()どもたちが()いたり、けんかしたりするので、ケーキがうまく(つく)れなかった。それに、()もが(ねつ)()したりすると、その()(みせ)()めなければならなかった。(まえ)より(やす)(おお)くして、()どもたちと(あそ)んであげた。()どもたちのことはもちろ(だい)()きだ。でも、ケーキが(つく)れないのつらい。だから、とにかくがんばった。()どもたちが()きる(まえ)(はたら)いて、()どもたちが()てからも(はたら)いた。(はは)(まえ)よりお(みせ)()どもの()()()(つだ)てくれた。

 だが、(せん)(げつ)(ちち)(びょう)()(にゅう)(いん)した。すぐに退(たい)(いん)して、ほっとしたが、(はは)はこれまでのように()(つだ)いに()れなくなった。それに、ボーノも(とお)くまで(りょう)()ていてしばらくうちに(かえ)ってこない

ピコは(なや)んでいた。

――(まい)(にち)こんな(せい)(かつ)(つづ)けられない。もうお(みせ)はやめよう。でも、やっぱりやめたくない。(らい)(しゅう)、ボーノが(かえ)ってきたら、(そう)(だん)よう――

 (つぎ)()ヤギの(えん)(ちょう)(せん)(せい)(みせ)にやってきた。

(らい)(しゅう)(きん)(よう)()(よう)()(えん)(うた)(はっ)(ぴょう)(かい)があるんだが、そあと、みんなにおいしいケーキをごちそうしようと(おも)うんだ。それで、ピコさん、ケーキを100()(つく)ってくれないか?」

「えっ、100()も! ありがとうございます。でも……」

「きっとみんな(よろこ)ぶぞ。(たの)しみだ。じゃあ、よろしく」

 (えん)(ちょう)(せん)(せい)(みせ)()ていった。

――どうしよう……。やっぱり(ことわ)たほうがよかったかなあ。(はっ)(ぴょう)(かい)()わるのは11()ぐらいだから、がんばればなんとか()()うはず。でも、ぎりぎりまで(つく)っていたら、()どもたちの(はっ)(ぴょう)()られなくなる……――

 ピコは(はは)(でん)()をかけた。

(わる)いわねえ。その()は、()(ぜん)(ちゅう)、お(とう)さんと(びょう)(いん)()かなきゃならないの。……ごめんなさい()(つだ)えなくて」

「そう……。じゃあ、しかたないわね……」

 

 (はっ)(ぴょう)(かい)(ぜん)(じつ)(てん)()はくもり。明日(あした)()るかなあ。ピコが(みせ)(かた)()けていると、「ただいま!」と(げん)()(こえ)()こえた。()どもたちが(よう)()(えん)から(かえ)ってきた

「ママ、明日(あした)発表会(はっぴょうかい)()()てくれるよね。ぼく、(たい)()をたたくんだ」

「ぼくはシンバルだよ」

「わたしはタンバリン」

「わたしはトライアングル」

(うた)(うた)うんだよ。いっぱい(れん)(しゅう)したんだから」

(せん)(せい)がとっても(じょう)()だってほめてくれた

(はや)()(いち)(ばん)(まえ)(せき)(すわ)ってね」

「あれ、どうしたの? ママ」

()いてるの?」

「ごめんね。みんな。明日(あした)発表会(はっぴょうかい)()()けないの」

「ええー、そんなの、やだ!」

 ()どもたちはみんなブーブー()()した。

 そのとき、ドアが()いて、(おお)きな(ふと)(こえ)()こえた

「ただいまー! あれ、なんでみんな()いているんだ?」

 主人(しゅじん)だ。

「あなた……。(かえ)ってくるのは明後日(あさって)じゃなかったの?」

「いやあ、()(てい)より(はや)(かえ)ってきたんだ。(たい)(ふう)(ちか)づいてきたから。それに、明日(あした)()どもたちの(はっ)(ぴょう)(かい)だろ? (きょ)(ねん)一昨年(おととし)()()けなかったし、今年(ことし)こそ()()こうと(おも)ってさ。(おや)(ぶん)(はや)(かえ)らせてほしいって()ったんだ」

 ()どもたちは、

「パパ、明日(あした)()()てくれるの!? やったー!」

()ってボーノに()きついた。

 ()どもたちを()かせたあと、ピコはボーノに(いま)まで(なや)んでいたことと明日(あした)ケーキのことを(はな)した。

「そうか。それは大変(たいへん)だったなあ。よし、()めた。おれもケーキ()になる! (りょう)()はやめた!

「えっ! そんな(きゅう)()めていいの?

「いいんだよ。やっぱりおれも()(ぞく)といっしょにいたいから」

「ボーノ……。ありがとう」

すると、()ども()()から(こえ)()こえた。

「お(とう)さんもケーキ()さんになるんだって。やったー!」

 

 翌朝(よくあさ)()にピコもボーノも()どもも()きた。ピコとボーノはケーキを(つく)り、()どもたちは()(ぶん)()()た。(あさ)(はん)(よう)()

「ほら、()て。ママ。ぼく、()(ぶん)(たまご)()ったんだ」

「あら、すごい! どこで(おぼ)えたの?」

「だって、毎日(まいにち)ママが(たまご)()ってる()てたもん」

「えっ……」

「パパもちゃんと(おぼ)えなきゃだめだよ」

「ははは」

 (あさ)ごはん()()、ちゃんと()にはケーキができた。

 今日(きょう)(あお)(ぞら)()(ぞく)をのせて、ボーノの(くるま)(はし)()ケーキにおいに(つつ)まれた(くるま)(なか)ピコは(ねむ)った。ボーノ「ママが()てるから、(しず)かにしてね」と()ったけど(よう)()(えん)(ちか)づくと、()どもたちは(げん)()(こえ)(うた)(はじ)めた。

(つづく)

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