Sunday, September 13, 2020

イノリ島④「夜明けのメガネザル」★★★

 


 メガネザルのコイルは、こんもラジオをいていた。

ラジオが()きだ。ラジオを()いていると、(せま)(しま)にいる()(ぶん)()(かい)つながっているように(かん)じる。そ()くだけじゃない。()(ぶん)(つく)(いま)使(つか)っているラジオも()(ぶん)()()た、お()()りのラジオだ。

でも、勉強(べんきょう)(きら)(にが)()だし、ぜんぜおもしろいと(おも)わないだから、学校(がっこう)ではずっと()ている。うちでももちろん宿題(しゅくだい)なんかしたことがない。

 ラジオのほかに、もうひとつ()きなものがある。(あさ)()()ることだ。()(くろ)(そら)(すこ)しずつ(あお)っぽくなって、それが(すこ)しずつ(しろ)くなり、(しろ)から(あか)へ、(あか)から(あお)へと()わっていく。その()(かん)(なに)りも()きだ。今日(きょう)も、昨日(きのう)(ばん)からずっと()きていて(あさ)()()てから()た。そして、(ひる)母親(ははおや)「いつまで()てるの!」()こされた。

――今日(きょう)(やす)みなんだから、()きなだけ()せてくれればいいのに……

 ()()()くと、(ちち)(おや)()っていた。

「コイル。この(あいだ)先生(せんせい)()っていたが、そろそろ将来(しょうらい)のことを()めないといけないぞ。あと3か(げつ)卒業(そつぎょう)だろ」

「わかってるよ……」

大学(だいがく)()ったらどうだ?」

勉強(べんきょう)……()きじゃない……

「じゃあ、(なに)()(ごと)()つけろ」

「うん……」

 コイルは(なや)んでいた。(だい)(がく)には()きたくなラジオに(かん)(けい)がある()(ごと)をした。けど、この(しま)にそんな()(ごと)はない。だからと()って、(まち)には()みたくない。(いそが)しい(せい)(かつ)(きら)いだ。それに、(まち)にはあいつがいる。

 

 (つぎ)()(がっ)(こう)からうちに(もど)ると、あいつがいた。ノイルだ。

「よう、コイル。(げん)()か?」

(かえ)ってたんだ。旅行(りょこう)()くんじゃなかったの?」

「ああ、その()(てい)だったけど、台風(たいふう)(ちか)づいているみたいだから、(えん)()したんだ。しばらくいるからよろしく」

 ノイルはコイルの(あに)(あたま)()くて、スポーツもできる。(せい)(かく)(あか)るくて、(とも)だちも(おお)い。2年前(ねんまえ)(まち)大学(だいがく)合格(ごうかく)(いえ)()た。(りょう)(しん)()(ぶん)息子(むすこ)がいい(だい)(がく)(はい)ったと(よろこ)んでいた。

 その()(ゆう)(しょく)、テーブルにノイルの()きな(りょう)()ばかり(なら)んだ。コイルは、()()わると、さっさと()(ぶん)()()()げこんだ。

 (つぎ)()学校(がっこう)()っても、コイルはうちに(かえ)りたくなくて、ぶらぶらしていた。そろそろ(ゆう)(がた)になるころ、(しま)(ちゅう)(おう)にある(とう)(だい)()かった。(とう)(だい)(のぼ)って(ゆう)()()ようと(おも)ったのだ。(あさ)()のほうが()きだが、(ゆう)()(きら)いじゃない

 本当(ほんとう)灯台(とうだい)(なか)(はい)ってはいけないってが、コイルは(とう)(だい)(かん)()しているタヌキのタヌキチおじさんに(たの)いつもこっそり(なか)()れてもらっていた。

 しかし、今日(きょう)灯台(とうだい)入口(いりぐち)(かぎ)がかかっていた。タヌキチおじさん見当(みあ)ない。しかたなく、コイルはうちに(かえ)ることにした。

 昨日(きのう)のように(ゆう)(しょく)(いそ)いで()べた。()(ぶん)()()(はい)ラジオをつけた。ロブの(うた)(なが)れた。(せん)(げつ)()(しん)(きょく)だ。

ノックの(おと)()こえた。

(はい)るぞ」

 ノイルが部屋(へや)(はい)ってきた。ラジオのボリューム()

(なに)?」

「さっき(とう)さんから、おまえが(しょう)(らい)のことで(なや)んでるって()いたから」

「べ、べつに(なや)んでないよ」

「じゃあ、どうするんだ。大学(だいがく)(はい)るのか? それとも、(はたら)くのか? そろそろ()めないといけないだろ」

「そうだけど……」

「ラジオばかり()(ちゅう)になってないで、まじめに(かんが)えたほうがいいぞ」

「……」

()められないなら、(だい)(がく)()けよ。とりあえず(だい)(がく)(はい)って、(べん)(きょう)しながら、ゆっくり将来(しょうらい)のことを(かんが)えたらいい(しま)(はな)れて(まち)(せい)(かつ)してみると(かんが)(かた)()わるそのうち、(なに)かやりたいことが()つかる

「……」

「まあ、でも(いま)から勉強(べんきょう)しても、おまえの(あたま)じゃ、いい(だい)(がく)には()れない(おも)うけどははは」

「うるさい! ()てけ!」

(おこ)るなよ。おれも心配(しんぱい)してるんだ。(こん)()(べん)(きょう)()(かた)(おし)えてやるよ」

 そう()うと、ノイルは部屋(へや)()ていった。

 コイルは、ベッドに(よこ)になり、天井(てんじょう)見上(みあ)た。ラジオから(たの)しそうな(わら)(ごえ)()こえた。

 

 (つぎ)()(おな)()(かん)(とう)(だい)()ったが、やタヌキチおじさんはいなかった。ため(いき)をつきながら、(かえ)(みち)(ある)いていると、トラの親分(おやぶん)()った。(おや)(ぶん)(いち)(ばん)(えら)(りょう)()で、コイルのうちの近所(きんじょ)()んでいる。

「おう、コイル、ちょうどいいところにいた! うちのラジオ、なんだか今朝(けさ)から調(ちょう)()(わる)くて、(きゅう)(うご)かなくなっちまったんだ。ちょっと()てくれないか」

 (まえ)にも親分(おやぶん)ラジオの調(ちょう)()(わる)くなったとき、(しゅう)()してあげたことがあった。うちに(かえ)りたくなかったので、「いいですよ」と(へん)()をした。

 しかし、ラジオの(しゅう)()()(しょう)(げん)(いん)がわからず(おも)った()(じょう)()(ろう)した。あれこれためして、ようやく(おと)()るようになったのは、(そと)がもうすっかり(くら)なってからだった

「ありがとよ! (たす)かったぜ。しかし、こんな(おそ)くまで(わる)かったなあ」

「いえ、(だい)(じょう)()です。ラジオは(だい)()きなんで。それに、ぼくは(よる)のほうが(げん)()。では、(しつれい)しま……」

 そこまで()いかけて(おも)()した。トラの親分(おやぶん)とタヌキチおじさんはたしか(なか)()かったはずだ。お(まつ)りのとき、いっしょにいるのを()たことがある。

「あのう、親分(おやぶん)。タヌキチおじさん、最近(さいきん)どうしてるか()ってますか? 昨日(きのう)今日(きょう)灯台(とうだい)()ったんですが、いなかったんです」

「タヌキチ? もちろん()ってるさ。昨日(きのう)今日(きょう)おれはあいつといっしょに(りょう)()たんだから」

「えっ! タヌキチおじさん、(りょう)()になったんですか?」

「そうじゃない。もともとタヌキチは(りょう)()んだ。ただ、(ひる)(とう)(だい)(かん)()してたクジャクばあさんが(びょう)()()めちまって、それから()わりにタヌキチ(とう)(だい)(かん)()をしてんだ。ほら、(りょう)()ていて(きゅう)(てん)()(わる)くなったりすると(あぶ)ないだろ。ら、(とう)(だい)(ひかり)(りょう)()って(たい)(せつ)なんだ。だ、(よる)みんな交代(こうたい)(かん)()してんだが、(ひる)(いえ)(ちか)いし、タヌキチ(まか)ことにんだ」

「へえー。でも、どうして(いま)はタヌキチさん、(とう)(だい)(かん)()しないで(りょう)()てるんですか?」

「いやあ、(じつ)(せん)(げつ)ひとりケーキ()になるって(きゅう)(りょう)()()めちまってなあ。それで、(ふね)ほう(ひと)()りなくなって(てん)()がいい()(とう)(だい)(やす)んで(りょう)()てもらうことにしたんだ

「へえー、そうだったんですか」

「まあ、でも、これからの時期(じき)(よる)(なが)くなるし、(てん)()()わりやすいから、タヌキチには灯台(とうだい)にいてもらわないと。はあ~、だれか(りょう)()になってくれる(わか)いやつがいればいいんだなあ……。ん? そう()えば、コイル、たしかおまえ今年(ことし)(そつ)(ぎょう)だよなあ」

「す、すみません。失礼(しつれい)します!」

 コイルは(あわ)てて()げだした。

 

――ぼくは(りょう)()なんて、できないよ ――

 

 (つぎ)()は、(とう)(だい)もう(ひる)()まっすぐうち(かえ)った。ドアを()けて、びっくりした。トラの親分(おやぶん)ノイルソファーに(すわ)ってコーヒーを()んでいた。

「おう、コイル。親分(おやぶん)からケーキをいただいた昨日(きのう)のお(れい)って

「あ、わざわざありがとうございます」

 コイルが(あたま)()げると、親分(おやぶん)はコーヒーカップを()いて()った。

()にするな。ほんの気持(きも)ちだ。それより、コイル、(よろこ)べ。(いま)ノイル(はな)してたんだ。おまえにぴったりの()(ごと)()ったぞ!」

「えっ!? ま、まさか! ぼ、ぼくには(りょう)()()()です!」

 

 (すう)(げつ)()。コイルは夕方前(ゆうがたまえ)にベッドから()()すと、すぐに()()えて、「いってきます!」と(いえ)()た。

 (とう)(だい)()くと、(いり)(ぐち)のとなりに(かん)(ばん)()ていた(おお)きな()(かん)(ばん)には、(ふと)()こうと()いてあった

「ラジオ(しゅう)()(うけたまわ)ります」

親分(おやぶん)ゴリじいさん(たの)(かん)(ばん)(つく)って

 (なか)(はい)ると、タヌキチおじさんがあくびをしながら()っていた

「おつかれさまです!」

「おう、もうそんな()(かん)か。()たか? あの(かん)(ばん)

「はい。これからがんばります!」

「ははは。よし、交代(こうたい)だ。早速(さっそく)(しゅう)()()(らい)が2(けん)あったぞ。そこにメモといっしょに()いてあるから、よろしくな」

「はい、わかりました!」

 (ひる)()(りょう)()(こう)(たい)(とう)(だい)(かん)()(よる)はコイルが(とう)(だい)(かん)()しながら、ラジオ(しゅう)()()(ごと)をする。それは、(あたま)のいいノイルが(かんが)えたアイディアだった。そして、そのアイディアをトラの(おや)(ぶん)()()り、コイルを採用(さいよう)してくれたのだ。まさか()(ぶん)()きなことが()(ごと)になるなんて。コイルはふたりに(こころ)から(かん)(しゃ)した。

 コイルは、灯台(とうだい)(ひかり)調(ちょう)(せい)したあと、ラジオの(しゅう)()(はじ)めた。今日(きょう)(くも)もなく、(ほし)もきれいだ。()(ちゅう)()(ぎょう)(つづ)け、2(だい)()(しゅう)()もう(すこ)()ころ、コイル()()がっ()(うみ)()こう(そら)(しら)みはじめた。

(つづく)

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