「目黒のさんま」★★★

()(ぐろ)さんま

 もう(あき)ですね。だいぶ(すず)しくなりました。(あき)にはおいしい()(もの)がたくさんあります。(くり)、きのこ、なす……。でも、やっぱり(あき)になると()べたくなるのが、さんまです。

 さんまは(うみ)(さかな)で、(あき)から(ふゆ)にかけて(たい)(へい)(よう)でよく()れます。()(かた)簡単(かんたん)(しお)をかけて()くだけです。そして、(やす)くてうまい。(ああ、おなかがすいてきた)

 それから、(あき)になると、(そと)運動(うんどう)したくなります。ジョギング、テニス、サッカー、ゴルフ。スポーツをするのにちょうどいい()(せつ)です。

 また、どこかへ()かけるのもいいですね。(くるま)で、バイクで、()(てん)(しゃ)で。紅葉(もみじ)もとてもきれいです。ですが、(むかし)はバイクや()(てん)(しゃ)がありませんので、(うま)()かけました。それを「(とお)()り」と()います。

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ある()殿(との)(さま)()(らい)(とお)()りに()かけました。()(せつ)(あき)で、(てん)()()く、紅葉(もみじ)とてもきれいで殿(との)(さま)たちは(なが)()(かん)(うま)()って(つか)れたので、(すこ)(やす)むことにしました。

 殿(との)(さま)()(らい)()いました。
「このへんは(やま)(おお)くて(くう)()がうまい。やっぱり(あき)(とお)()りに(かぎ)る!」
「ええ、()()ちがいいですね」
「ここは(なん)うところだ?」
「ここは()(ぐろ)でございます」
「そうか。()(ぐろ)か。よいところだ。だが、ずいぶん(とお)くまで()しまったなあ」
「そうですね。おなかもすいてきましたし、そろそろお(しろ)(かえ)りましょう」
()て! (なに)かいいにおいがするぞ
「におい? あっ、あそこの(いえ)(さかな)()いているようですね。(けむり)()ています。ああこれはさんまのにおいですね」
「さんま? ()べたことがない。おなかもすいたし、(いち)()()べてみるか
殿(との)いけません! さんまは()(ぶん)(ひく)(もの)()べる(さかな)です。殿(との)のような()(ぶん)(たか)(かた)()べるものではありません」
「そうか……しかし、いいにおいだ。では、(すこ)()るだけでも」
「あっ、殿(との)!」
 殿(との)(さま)(うま)()りて(けむり)()ている(いえ)(はい)っていきました

 (いえ)(なか)ではおじいさんがさんま()いていました。
だれだ? あっ! お殿(との)(さま)! どうしてこんなところに!?
「これがさんまか?」
ええ

 さんまはいい(いろ)()けていて、(あぶら)()()ちると、じゅっとおいしそうな(おと)がします。
 殿(との)(さま)はもう()べたくて()べたくてしかたがありません。
「すまないが、これを()べさせてくれ」
「えっ! お殿(との)(さま)がさんまを!? ですが、これはわたくしの(ちゅう)(しょく)ですので……
(なに)!? では、(かね)をやろういくらほしい?」
「いえ、いません。お(かね)をいただいても、このさんまはゆずれません。うちは(しょく)(どう)ではありませんので」
「うるさい!」
 殿(との)(さま)はおじいさんのはしを()ると()いているさんまをつかんで、(くち)()れました。
「なっ! あぁ~



「うまい!! こんなうまいもの、はじめて()べた!
殿(との)(さま)ひとりで(ぜん)()さんまを()べてしまいました。

「ああ、うまかった。()(ぐろ)本当(ほんとう)によいところだ」
 殿(との)(さま)たちはおじいさんにたくさんお(かね)をあげて、お(しろ)(かえ)りました。

 お(しろ)(はい)るとき、()(らい)殿(との)(さま)()いました。
殿(との)今日(きょう)()(ぐろ)でさんまを()べたことはお(わす)れください。お(しろ)ではこのことは(ぜっ)(たい)()ってはいけませんぞ!」
「わかった。だれにも()わん」

 ところが、殿(との)(さま)()(ぐろ)()べたさんまの(あじ)(わす)れられません。お(しろ)(しょく)()には、もちろんさんまは()てきません。殿(との)(さま)(まい)(にち)、さんまが()べたいさんまが()べたいと(おも)っていました。
 
 ある()殿(との)(さま)(よう)()があって、(しん)(せき)(いえ)()かけることになりました。殿(との)(さま)(よろこ)びました。(しん)(せき)(いえ)では(ちゅう)(しょく)(なん)でも()きなものが()べられるのです。
 
 殿(との)(さま)(しん)(せき)(いえ)()くと、すぐに(いえ)(しゅ)(じん)()んで、
「わしはさんまが()べたい!」
()いました。
さんま!? あの(さかな)のさんまですか?
「そうだ。(わる)いか!?」
「いえ。では、ご(よう)()いたします」
 
 (しゅ)(じん)はすぐに(りょう)()(ばん)()んで、日本橋(にほんばし)へさんまを()いに()かせました。(このころ、日本橋(にほんばし)には(おお)きな(うお)(いち)()がありました)。(りょう)()(ばん)はその(うお)(いち)()(いち)(ばん)(おお)きくて立派(りっぱ)さんまを()いました今朝(けさ)(ちょう)()()たばかりのさんまです。それから、(いえ)(もど)って、どんな(りょう)()(つく)ればいいか主人(しゅじん)(そう)(だん)しました。

「さんまを()べたいと()いて、びっくりしました殿(との)(さま)はさんまを()べたことがあるんですか?」
「あるわけがないよ。きっとだれかに()いたんだよ」
「なるほど」
「このさんま、(あぶら)がのっていて、うまそうだなあ」
「ですが(あぶら)(おお)(からだ)よくないですよ。それに、さんまは(ちい)(ほね)がたくさんあります。もし(ほね)がのど()さったら(たい)(へん)です
「う~ん。では()かないで()せ。()せば、(あぶら)()るし、(くろ)くならない(ほね)(ぜん)()()
「はい!」

(りょう)()(ばん)は、さんまの(あたま)()って、おなかを(ひら)いて、()ました。それから、(かわ)()って、一本(いっぽん)一本(いっぽん)(ほね)()ると、それをつぶして、(まる)めて、ゆでて、お(わん)()れました

(ちゅう)(しょく)()(かん)(しゅ)(じん)のお(わん)殿(との)(さま)(まえ)()しました。
さんまでございます。どうぞお()()がりください」
こ、これがさんまか?」
はい。さんまでございます」
殿(との)(さま)それをはしで(すこ)()って、(はな)(ちか)づけました。
んん~、たしかにさんまのにおい(すこ)する……」

おそるおそる殿(との)(さま)はそれを(くち)まで(はこ)ました。ですが、(あぶら)もない()したさんまがおいしいわけがありません。
「まずい! これはどこのさんまだ!
銚子(ちょうし)のさんまでございます」
銚子(ちょうし)? だから、まずいのだ。さんまは()(ぐろ)(かぎ)

<おしまい>



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