「黒コウモリと白コウモリ」★★

ある(もり)にコウモリの(むら)があった。
その(むら)(ちい)さな(どう)(くつ)にひとりのコウモリが()んでいた。
()(まえ)はサカサ。
()(ぞく)はいない。(とも)だちも……
 

ある(よる)、サカサは(そら)見上(み あ)げた。(まる)(つき)がきれいだった。
サカサはどこか(とお)いところまで()んで()きたくなった。
                    
(くも)のない(そら)をサカサは()んだ。
(はじ)めて(やま)()えた。
(おお)きな(みずうみ)があった。
そこで(みず)()んで(すこ)(やす)んだ。

(よる)()けるまで()(つづ)けた。
(すこ)しも(つか)れていなかった。
どこまでも()んでいけると(おも)った。


                                     
(あさ)になると、(おお)きな()()つけて、(えだ)にぶらさがって(ねむ)った。      
そして、(よる)()ると、また()んだ。


ある(あさ)、サカサが()ていると、ガサッという(おと)がした。
―― (とり) ? 
サカサは()()けた。




(しろ)はねのコウモリがえだすわっていた。
サカサはそのコウモリを()て、とてもきれいだと(おも)った。

サカサは、その(しろ)(はね)のコウモリに(こえ)をかけた。

「ねえ、きみはコウモリ?」
「え、ええ。……あなたもコウモリ?」
「もちろん。……ぼく、(しろ)(はね)のコウモリなんてはじめて()たよ」
「わたしも(くろ)(はね)のコウモリを()たのははじめて」
「えっ!? コウモリの(はね)はみんな(くろ)いだろ」
「そんなことないわ。わたしの()(ぞく)(とも)だちはみんな(しろ)よ」
「そうなの!? ぼくが()んでいた(もり)のコウモリはみんな(くろ)だよ」
「ふうん、そう」
「でも、コウモリが(えだ)(すわ)るなんてちょっと(へん)だよ」
(へん)? あなたこそ(えだ)にぶらさがるなんて(へん)よ」    
「えっ!?」

ふたりの(はなし)は、なかなかかみ()わない。
「ねえ、きみの()(まえ)は?」
「ミンミ。あなたは?」
「サカサ」
「サカサ? ふふふ。(へん)()(まえ)
「そっちこそ!」

ふたりの(はなし)はやっぱりかみ()わない。
けれど、ふたりは(なか)()くなった。


サカサはミンミのむららしはじめた。
ミンミの()(ぞく)(とも)だちは(ほん)(とう)(はね)(しろ)かった。
(しろ)コウモリは(ちい)さな(はね)(うご)かして、()がったり、()がったりして()ぶ。
(くろ)コウモリは(おお)きな(はね)(かぜ)()って()ぶ。
(しろ)コウモリは(あさ)()きて(よる)()る。
みんな(あたま)(うえ)にして(すわ)る。(だれもぶらさがらない)

サカサはミンミに()った。
(しろ)コウモリは(くろ)コウモリと(ぜん)(ぜん)(ちが)うね」
「でも、(おな)じところもあるでしょ?」
「どこが?」
()べるし、()るし、(そら)()ぶ」
「ははは、そうだね」
「それに……」
「それに?」
(しろ)コウモリもみんな(おな)じじゃないわ。ひとりひとり(かお)(かんが)(かた)(ちが)う。くろコウモリもそうでしょ?」
「うん」
「だから、わたしはわたし。サカサはサカサ。……ふふふ、やっぱり(へん)()(まえ)
 サカサはミンミとずっといっしょにいたいと(おも)った。

サカサは、(しろ)コウモリと(おな)じように(あさ)()きて(よる)()た。
本当(ほんとう)(えだ)にぶらさがりたかったけど、(あたま)(うえ)にして(すわ)った。

でも、ミンミの()(ぞく)(とも)だちは、サカサのことをなかなか()きになってくれなかった。



ある()、ミンミはサカサに()った。
「ねえ。わたし、サカサが()まれた(もり)()てみたい」

サカサはミンミを()れて(もり)(かえ)った。

そして、ふたりは(ちい)さな(どう)(くつ)(しず)かに()らし(はじ)めた。


(もり)()んでいた(くろ)コウモリたちは、(しろ)(はね)のミンミを()て、(おどろ)いた。
「おい。(へん)なコウモリがいるぞ」
とだれかが()った。
だれもミンミに(はな)しかけてこなかった。

ある()(やま)()()()きた。
(もり)()け、(どう)(くつ)はどこも(けむり)でいっぱいになった。コウモリたちは(ひっ)()()げた。
やがて(あめ)()り、()()えた。


 
サカサもミンミも()()だった。
けれど、(もり)にはもう()めなくなった。

(くろ)コウモリたちは、みんな(あつ)まり、これからどうしようかと(はな)()った。
でも、みんなどうすればいいかわからなかった。
だれも(もり)(そと)()たことがなかったし、だれも(ほか)()らせる()(しょ)()らなかった。

 
ひとりの(くろ)コウモリが()った。
「この(もり)()()になったのは、その(しろ)コウモリのせいだ!」
(なに)!」
サカサは(おこ)って、その(くろ)コウモリに()びかかろうとした。
「やめて!」
ミンミはサカサを()めた。
そして、みんなに()った。

「わたし、いい()(しょ)()ってる。ちょっと(とお)いけど。そこには、みんながぶらさがれるぐらいのとっても(おお)きな()があるの。そこでしばらく()らして、その(あいだ)(あたら)しい(どう)(くつ)()つけるといいわ。……でも、そこには(しろ)(はね)のコウモリがたくさんいるの。わたしと(おな)じ。それでもいいなら、わたしについてきて」

ミンミは()んだ。
()って!」
サカサが()ぶと、(すこ)(おく)れてみんなもついてきた。



(なが)れる(ほし)
(かわ)いた(かぜ)
(つめ)たい(あめ)
(とり)(うた)
(おお)きな(みずうみ)
(ひか)(むし)
(にが)果物(くだもの)
(はな)(にお)

 
それは(なが)(なが)(たび)だった。

そして、ある(ばん)、ミンミの(むら)にたどり()いた。
(むら)(しろ)コウモリたちは、たくさんの(くろ)コウモリを()(おどろ)いた。
だれかが()った。
(くろ)(はね)のコウモリはサカサだけじゃなかったんだ……」

(しろ)コウモリたちはミンミから(はなし)()くと、(しょく)()()したり、(むら)(あん)(ない)したりしてあげた。
(くろ)コウモリたちは(なみだ)(なが)して(かん)(しゃ)した。
「ありがとうございます。みなさんの(しん)(せつ)(ぜっ)(たい)(わす)れません」

あの(くろ)コウモリが()った。
「ミンミさん、あの(とき)はひどいことを()って(ほん)(とう)にすみませんでした」

(くろ)コウモリたちは(えだ)にぶらさがってゆっくり(やす)んだ。


それを()て、(しろ)コウモリたちはまた(おどろ)いた。

やがて(くろ)コウモリたちは(ちか)くの(もり)(どう)(くつ)()つけ、()()して()った。
サカサとミンミは(むら)(のこ)った。
(まえ)よりみんな(しん)(せつ)にしてくれた。

ある()(むら)(おお)きな(たい)(ふう)()た。
(つよ)(かぜ)(もり)()()()()ばした。
(むら)(しろ)コウモリたちはみんな(あつ)まり、どうしようかと(はな)()った。



その(とき)、サカサが()った。
「みんな! (くろ)コウモリたちのところに()こう! (どう)(くつ)なら(あん)(ぜん)だ!」
「えっ! でも……」
(だい)(じょう)()! (かれ)らはきっと(たす)けてくれる! それに、(どう)(くつ)(せま)いけど、(かれ)らはいつも(てん)(じょう)にぶらさがっているから、(ゆか)()いているんだ」
「そうか!」
(しろ)コウモリたちは、サカサについて(くろ)コウモリの(どう)(くつ)まで()んで()った。
              
(どう)(くつ)()いたとき、(くろ)コウモリたちはみんな(てん)(じょう)にぶらさがって(ねむ)っていた。
けれど、(あめ)()れた(しろ)コウモリたちに()()くと、みんな()()きた。



(くろ)コウモリたちは(よろこ)んで、「よく()てくれた!」とだれもが()った。
(しろ)コウモリたちは(なみだ)(なが)して(よろこ)んだ。
そして、いっしょに(しょく)()をして、(うた)ったり、(おど)ったり、おしゃべりをして(ひと)(ばん)(じゅう)(たの)しく()ごした。

そろそろ()()けるころ、みんな(つか)れて(ねむ)りについた。
サカサとミンミは(そと)()た。
(たい)(ふう)はもうどこかへ()っていた。



()て。きれい」とミンミが()った。
(ひがし)(そら)(あさ)()(のぼ)りはじめていた。
「きれいだね。でも、ほら、あっちも(
(くら)西(にし)(そら)にはまだ(つき)(のこ)っていた。
「ふふふ。あっちもきれい」
ミンミが(わら)うと、サカサも(わら)った。

ふたりは()んだ。
(よる)(あさ)の、(くろ)(しろ)(あいだ)(そら)を。








(完)

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