「忍者少年ゼロ」★★★★


――()きろ!

という(こえ)で、服部(はっとり)(れい)()()()ました。

テレビがついていた。()()にはだれもいなかった。

 (いま)(こえ)はだれ? (ゆめ)? 

 (そと)はまだ(あか)るい。()(けい)()ると、()()だった。



 (じゅっ)(さい)(なつ)(やす)み。(れい)()(とう)(きょう)()んでいたが、(なつ)(やす)みの(あいだ)祖父(そふ)(いえ)(あず)けられていた。

 両親(りょうしん)毎日(まいにち)仕事(しごと)(いそが)しく、どこにも()れて()ってくれない。それなのに、いつも、「(べん)(きょう)しろとうるさく()。そんな東京(とうきょう)うちにいるより田舎(いなか)(なに)もないとこだけど、こっちのほうがずっといい。おじいちゃんとおばあちゃんはとっても(やさ)しいし、ぼくの(あそ)(あい)()になってくれる。

  でも、今日(きょう)はふたりとも(あさ)(はや)くに(ちか)くの(まち)()(もの)()かけて()った。()かける(まえ)に「(ゆう)(がた)までには(かえ)るから、()()(ばん)(たの)むよ」とおじいちゃんが()っていた。

 ()(ぜん)(ちゅう)のうちに宿(しゅく)(だい)()ませ、お(ひる)におばあちゃんが(つく)ってくれたおにぎりを()べた。()(だん)ならそのあとおじいちゃんと()りに()れて()ったりする。今日(きょう)(とく)(なに)もやることがない。ゲームに()きて、(よこ)になってテレビを()ているうちに()てしまったようだ。



――(いそ)いで(そと)()るんだ!

 また(こえ)がした(ゆめ)じゃない。その(こえ)は、(あたま)(なか)(ちょく)(せつ)()こえてくる。(れい)()(こわ)くなって()()(すみ)()(どう)した。

「だれ?」

 (ゆう)()()して()いてみた

――(いま)(せつ)(めい)している()(かん)ない。ここは()(けん)だ。(はや)(そと)()ろ!

()(けん)? (なん)で?」

――(はや)くしろ!

 (れい)()は、とにかくこの部屋(へや)()てみることにした。部屋(へや)(そと)なら、この(こえ)()こえなくなるかもしれない。

 だが、(げん)(かん)(ほう)(あし)()けると、また(こえ)がした。

――そっちじゃない! (だい)(どころ)(まど)からだ。

(まど)? でも、(くつ)ないし……」

 (だい)(どころ)(げん)(かん)(ぎゃく)(ほう)(こう)にある。そのとき、ピンポーンとチャイムが()った。

 お(きゃく)さん? 

 ピンポーン。

また()った。

――いいから、台所(だいどころ)()

「でも……」

 (すこ)(まよ)ったが、(こえ)無視(むし)(げん)(かん)()かった。

――だめだ! ()くな!



 (げん)(かん)(まえ)まで()たとき、ダン、ダン、ダン、と()(たた)(おと)がした。(うす)()()こうから(おとこ)(こえ)()こえた。

「アニキ、だれもいないようですぜ」

(かぎ)(こわ)せ」

「はい」

 ガンッ。()(かた)いものがぶつかる(おと)がした。(しん)(ぞう)()()がった。

(れい)()そっと(くつ)()り、(だい)(どころ)(いそ)いだ。

 

 (だい)(どころ)()くと、(まど)から(くつ)(ほう)()げ、(あし)をかけて(そと)()ようとしたが、(あせ)()(すべ)って、(しり)から()(めん)()ちてしまった。

 (いた)い……

 (くつ)()いていると、ガラガラという(おと)()こえた。()()いたようだ。

 まずい。テレビをつけたままだ。でも、もう(もど)ない(はや)()げなきゃ。でも、どこ

 この(いえ)(まわ)りには()んぼしかない。(となり)(いえ)までは(いち)キロ()(じょう)(はな)れている。それに(いえ)(まえ)(どう)()(いっ)(ぽん)(みち)だから()って()られたら(つか)まってしまう。そのとき、(あたま)(なか)(こえ)がした。

――(くら)だ!

 (れい)()()()した。

 

 (うら)(にわ)には(ちい)さい(はたけ)があって、その(おく)(ふる)(くら)がある。(くら)(なか)には()りや(はたけ)()(ごと)(どう)()がしまってあった。

 (むね)(くる)しい。

 (れい)()は、はあはあと(かた)(いき)をしながら、(うす)(ぐら)(くら)(なか)(はい)っていった。

ひんやりしていて(すず)しい(すわ)って(やす)みたい(はや)(かく)れないと

 ()()めると、また(こえ)()こえた。

――(おく)にタンスがある。その(なか)()(はこ)(はい)ってい。それを()けろ!

()(はこ)?」

 (さが)すと、すぐにタンスは()つかった。でも、タンスの()()しを(した)から()けていったが、なかなか()(はこ)()てこない。(れい)()(しん)(ちょう)では(うえ)のほう()(とど)かない。(まわ)りを()ると、()()があった。その()()(はこ)(くつ)()()(うえ)のほう()()しを()てい

 あった!

 (けっ)(きょく)(おお)きな()(はこ)(はい)っていた(いち)(ばん)(うえ)()()ったさっそく(はこ)のふたを()けようとしたが、なかなか()かない。そこで、(いち)()(はこ)()()して(ゆか)()両足(りょうあし)(はこ)をはさんで(おも)いっきりふたを()っぱ。すると、(すこ)(うご)いたかと(おも)うと、(きゅう)に、ばかっとふたが()いた。その(いきお)いで(れい)()(うし)ろに(たお)れ、またお(しり)(つよ)()った。

 (いた)たた……。えっ、(なに)、これ?

 (はこ)(なか)から(くも)のような(しろ)(けむり)()てきた。そして、その(けむり)は、だんだん(ひと)(かたち)()わっていく。

「やっと()えたな。服部(はっとり)(れい)()よ」

 この(こえ)は、(あたま)(なか)でしていた(こえ)だ。

 (けむり)(なか)から(あらわ)れたのは(ろう)(じん)だった。(かお)おじいちゃんにそっくりだった。けど(りっ)()(しろ)(ひげ)()やして、浴衣(ゆかた)みたいな(くろ)(ふく)()ている。それ(あし)がない。ふわふわ(ちゅう)()いている。

「だ、だれ?」

「わしはおまえの(せん)()服部(はっとり)(じゅう)衛門(えもん)だ」

服部(はっとり)? じゃあ、ぼくのご(せん)()(さま)

「ああ、そうだ。()んでしまって、(からだ)はもうない。(いま)はおまえにだけ、わしの姿が()えているのだ」

「へええ、そうなんだ。あっ、さっきは(たす)けてくれてありがとう」

「ふん、まだ(たす)かっておらんぞ。(いそ)ぐんだもうすぐあの(おとこ)たちがここへやってくる。(はや)く、この(はこ)(なか)にある(ふく)()()えるんだ」

()()える!?」

 (はこ)(なか)(ふる)(まき)(もの)()()(しき)のような(ぬの)(つつ)まれた(くろ)(ふく)(はい)っていた。

 ()(かた)(じゅう)衛門(えもん)(おし)えてくれた。(じゅう)衛門(えもん)()()()えた(れい)()()(ぶん)(まえ)()たせた。そして、()()じると、(りょう)()(ひと)()(ゆび)()わせ、ぶつぶつ(なに)かつぶやき(はじ)めた。

 この(ふく)(うす)いけど、(あたた)かい。それに、このにおい、なんだか(なつ)かしい。

(とつ)(ぜん)(ふところ)()(まき)(もの)(あつ)った()()くと、(れい)()(からだ)()()()(ひかり)(つつ)まれていた。



「おい、この(はたけ)()ろ。(あし)(あと)だ。どうやら()どものようだな」

 (そと)から(おとこ)たちの(こえ)()こえてきた。

 (じゅう)衛門(えもん)(ふく)(つつ)んでいた()()(しき)のような(ぬの)(ゆび)さした。

(れい)()よ。その(ぬの)(りょう)()(ひろ)げて(たか)()げ、(かべ)()(なか)つけるんだ」

「えっ、そんなことしても、(かく)れられないよ。すぐに()つかっちゃう

()鹿()(もの)! (たす)かりたければ、()(とお)りにしろ!」

 このご(せん)()(さま)は、おじいちゃんと(かお)()てるけど、(せい)(かく)(ぜん)(ぜん)(ちが)う。(きび)しいしょうない

 (れい)()(ぬの)()()り、()われた(とお)り、(りょう)()(ひろ)げて(たか)()げ、(かべ)()(なか)くっつけた。すると、(ぬの)(かべ)(いろ)()わり、(れい)()(からだ)(かべ)(なか)()()まれていった。

 なっ、(なに)、これ!?

 ドアが(ひら)き、(おとこ)たちが(くら)(なか)(はい)ってきた。

「おーい。いるんでしょ? ()ってるよ。さっきまでテレビを()ていた()だろ。(はや)()()てよ。ちょっと()きたいことがあるんだ」

 (げん)(かん)のところで()いた(おとこ)(こえ)だ。(わか)(かん)じがする。なんだか(まえ)より(こえ)(おと)がよく()こえる。(あし)(おと)も――二人(ふたり)三人(さんにん)……四人(よにん)だ。

「ねえ、どこにいるの?」

 (ひく)(こえ)(おとこ)がいらいらして、

「おい。()っていないで、(はや)(さが)せ! ()どもと(まき)(もの)だ」

()うと、

「はい、すみません。アニキ」

(おとこ)たちは(きん)(ちょう)した(よう)()(くら)(なか)(さが)(はじ)めた。

 (いり)(ぐち)(ほう)からだんだんこっちに(ちか)づいて()る。

「ん?」

「どうかしましたか? アニキ」

「この()()()ろ。ここだけほこりが()ちているだろ。()どもの(あし)(あと)だ。()(ちが)いない。ここにいる」

「おお、さすがアニキ」

 しかし、そのあと、(おとこ)たちがいくら(れい)()のことを(さが)しても()つからなかった。

 (しん)じられない。こんなに(ちか)くにいるのに……

 (さん)(じゅっ)(ぷん)ほど()ったころ、アニキと()ばれていた(おとこ)(ひく)(こえ)()こえた。

「もういい!」

「もう(いち)()(いえ)(ほう)(さが)しましょうか?」

「いや、(いち)()()()げる。(ゆう)(がた)、じいさんたちが(かえ)ってきてからだ」

 (おとこ)たちの(あし)(おと)(とお)くなり、やがて(くるま)(はっ)(しん)する(おと)()こえた。



 (うで)()ろすと、(れい)()(からだ)(かべ)(そと)()て、(ぬの)(もと)(いろ)(もど)った。(れい)()(すこ)()()け、(そと)(かく)(にん)した。(おとこ)たちはいなかった。(はたけ)(わき)にある()にカラス(いっ)(ぴき)がいるだけだった。

 ふう、(たす)かった……

 そこに(ふたた)(じゅう)衛門(えもん)(あらわ)れた。

「よくやった」

とほめてくれたが、(かお)(こわ)いままだ。

「ねえ、さっきぼくが(ぬの)()えたのは、(なん)だったの?」

「あれは(かく)()(じゅつ)だ」

(かく)()(じゅつ)?」

(にん)(じゃ)使(つか)(じゅつ)(にん)(じゅつ)だ。おまえは(にん)(じゃ)になったのだ」

「ええっー! ぼくが(にん)(じゃ)!?」

「そうだ。わしも(にん)(じゃ)だ。おまえの身体(からだ)には(にん)(じゃ)()(なが)れているのだ」

「でも、おとうさんもおじいちゃんも(にん)(じゃ)じゃないよ」

「……そう。(ざん)(ねん)なことに、()(だい)とともに(にん)(じゃ)(ひつ)(よう)とされなくなり、だれも(にん)(じゅつ)(おぼ)えようとしなくなった。そして、()(そん)(せん)()(にん)(じゃ)であったことも(わす)れてしまった。しかし、(れい)()、おまえはまだ(わか)い。そして()(こころ)()っている。わしは(さん)(びゃく)(ねん)(かん)、おまえのような(もの)(あらわ)れるのをずっと()っていただ」

「ぼくを? ……けど、ぼく、()(ひく)いし、(あし)(おそ)いよ。(うん)(どう)(にが)()だし」

(しん)(ぱい)するな。(にん)(じゃ)(いち)(ばん)(たい)(せつ)なもの。それは(つよ)(こころ)だ。おまえは()(なお)()(こころ)()っておる。きっと(つよ)くなる。それに、(しん)じられないかもしれないが、おまえの(からだ)はもう(にん)(じゃ)(ちから)()()けているのだ。(すこ)()んでみろ」

()ぶ? ジャンプするってこと?」

「そうだ」

「うん、やってみる。それ!」

 ゴンッ! 

 (いた)い! (あたま)(なに)かぶつかった。て、(てん)(じょう)!? (しん)じられない。(くら)(てん)(じょう)まで()メートルはあるのに。

()鹿()(もの)! 『(すこ)し』と()っただろ。()(げん)しないと、ケガをするぞ。その(ふく)()()け、(にん)(じゃ)になった(もの)は、身体(からだ)(かる)くなり、()(だん)(じゅう)(ばい)()(じょう)(ちから)()せるのだ」

「へえー。あ、もしかして(みみ)()()こえるようになったのも、(にん)(じゃ)になったから?」

「そうだ。(みみ)()(はな)(さま)々なことを(びん)(かん)(かん)()ることができるのだ」

「すごい! これなら(わる)(もの)からも()げられる

「ああ。だが、()げるだけではだめだ。(たい)(せつ)なものを(まも)るためには、(たたか)わなければならない」

(たい)(せつ)なもの……。あっ、おじいちゃんとおばあちゃん!」

「そうだ。そして、(まき)(もの)だ。さっきの(おとこ)たちが()しがっていたのは、(にん)(じゅつ)()かれた(まき)(もの)だ。なぜかわからないが、どうやらあの(おとこ)たちに(まき)(もの)(そん)(ざい)()られてしまったらしい。(にん)(じゅつ)使(つか)えば、だれにも()づかれずに(かね)()ることも(ひと)(ころ)すことも(かん)(たん)にできる。あの(おとこ)たち(まき)(もの)()にしたら、きっと(おそ)ろしいことが()きるろう(いま)(まき)(もの)(まも)れるのは(れい)()(まえ)しかいない。(たの)む! (まき)(もの)(まも)ってくれ!」

 (じゅう)衛門(えもん)(あたま)()げた。

 こんなふうにだれかに(たよ)られのは()まれてはじめてだ。それに、(だい)()きなおじいちゃんとおばあちゃんを(まも)らなきゃ。

「ぼく、やるよ。ぼくが(まも)る!」

「そうか。ありがたい。では、(さっ)(そく)(しゅ)(ぎょう)だ。(ゆう)(がた)までに()(ほん)(てき)(じゅつ)(おぼ)え、この(ちから)()れるだ」

「うん! あ、そうだ。忍者(にんじゃ)ったら、()(まえ)()きゃ

「ふふふ。()(まえ)(かんが)る。お(まえ)今日(きょう)(れい)衛門(えもん)じゃ

「いやだよ。そんな()(まえ)っこるい」

「なんじゃと!」

「ん~。(なに)いいなあ…。そうだ! いい()(まえ)(おも)つい!」



 (ゆう)(がた)(おとこ)たちの(くるま)がやってきた。だが、(いえ)(ひゃく)メートル()(まえ)(みち)(きゅう)()まった。(うん)(てん)していた(わか)(おとこ)(くるま)から()りてきて、タイヤを()ている。

「どうした? パンクか」

 眼鏡(めがね)をかけた(おとこ)()りてきた。

「ええ、タイヤに(なに)(ふと)(てつ)(はり)のようなものが()さってい

(なに)!? (はり)? あああああーーーっ!」

 眼鏡(めがね)(おとこ)()()がった。

「えっ! どうしました?」

 眼鏡(めがね)(おとこ)()いたサンダルの(うら)(ふと)(はり)ようものが()()っていた。()ると、それと(おな)じものが(みち)のあちこちに()かれていた。

「それはマキビシだよ」

 どこからか(しょう)(ねん)(こえ)()こえた。

「だっ、だれだ!?」

 (おとこ)たちは(あた)りを()(まわ)した。しかし、どこにも姿(すがた)()えない。(くるま)から(ふと)った(おとこ)(しろ)いスーツを()(おとこ)()りてきた。

 (かぜ)()いた。コンッと(かる)()(いし)(くるま)にぶつかる(おと)がした。(おとこ)たちがいっせいにその(ほう)()いた。(くるま)(うえ)に、(ゆう)()()にした(にん)(じゃ)姿(すがた)(しょう)(ねん)()っていた。

「だれだ!?」

「ぼくの()(まえ)はゼロ。(にん)(じゃ)ゼロだ!」

(にん)(じゃ)?」

(わる)いけど、おまえたちが(さが)している(まき)(もの)は、ぼくがもらった!」

 ゼロはそう()って、(ふところ)から(まき)(もの)()()して()せた。

 (しろ)いスーツの(おとこ)(ひく)(こえ)

「ふん。ずいぶんかわいい(にん)(じゃ)だなあ。ああ、そうか。おれたちの()わりに()ってきてくれたのか。ありがとよ。じゃあ、おとなしくそれをこっちへ(わた)すんだ」

()った

 (となり)にいた(わか)(おとこ)がナイフを()()した。(おとこ)たちは(くるま)(かこ)んだ。

「いやだよ」

ゼロは()んだ。(いっ)(しゅん)(たか)()(えだ)()(どう)した。「えっ!」と(おとこ)たちは(おも)わず(いき)()んだ。ゼロはすぐに(となり)()()(うつ)り、(はやし)(なか)()えて()った。(おとこ)たちは(あわ)てて、「()てー!」と()いかけた。

「どこだ?」

 (くら)(はやし)(なか)(おとこ)たちはゼロ(さが)(まわ)った。しかし、「()つけた!」と(おも)うと、(つぎ)(しゅん)(かん)にはいなくなる。(おとこ)たちはもう(あせ)まみれだ。

「ここだよ」

 (おとこ)たちが(こえ)がした(ほう)()をやると、そこにゼロがいた。

(うご)くな!」

 (いち)(ばん)(ちか)くにいた(わか)(おとこ)がナイフを()()げてゼロに()かって()く。ゼロは(うご)かない。あと2メートルと(せま)ったところで、(とつ)(ぜん)(おとこ)姿(すがた)()えた――ゼロが()したのか。(ちが)う。(おとこ)(いけ)()ちたのだ。「(たす)けてくれー!」と(さけ)んでいる。ゼロが()っている()(しょ)(いけ)(うえ)だった。

「どう? (あせ)かいてたから、すっきりしたでしょ?」

()って、ゼロは(あし)()いた(まる)(いた)のようなもので、(いけ)(うえ)をスケートのように(かろ)やかに(すべ)って()く。そして、また()えなくなった。

 (おとこ)たちはまた(ひっ)()にゼロを(さが)さなければならなかった。()はすっかり()(つき)()ていた。

 (しろ)スーツの(おとこ)が「いたぞ!」と仲間(なかま)()んだ。しかし、それと(どう)()に、眼鏡(めがね)(おとこ)アニキ、こっち!」と反対(はんたい)(ほう)(さけ)(ふと)った(おとこ)も「こっち! こっち!」と(べつ)のところを(ゆび)した。(とお)くの(ほう)でも(いけ)()ちた(おとこ)「ここにいるぞ!」と。

 (しろ)スーツの(おとこ)(かんが)えた――どうしてこっちにもあっちに忍者(にんじゃ)がいるんだ? もしかして(さい)(しょ)から()(にん)いたのか?  

(ちが)うよ。一人(ひとり)だよ」

 (おとこ)()(なか)(つめ)たいものを(かん)じた。()(かえ)ると、(ほそ)()(えだ)に、(つき)()らされた()(にん)()(にん)(じゃ)()っていた。

「ねえ、もう(あきら)めたほうがいいんじゃない?」

「ふっ、(あきら)めるのはおまえのほうだ」

 (しろ)スーツの(おとこ)(ふところ)からピストルを()()し、(じゅう)(こう)をゼロに()けた。

 ゼロは(こおり)のように(うご)かない。

 (ほか)(おとこ)たちも(あつ)まってきた。

 (しろ)スーツの(おとこ)はゼロの()()

「さあ、巻物(まきもの)()すんだ!」

()った。

 ゼロは(じゅう)衛門(えもん)言葉(ことば)(おも)()していた――(にん)(じゃ)(いち)(ばん)(たい)(せつ)なもの。それは(つよ)(こころ)だ』――

 ゼロは(しず)かに(いき)()った。

 シュッと(かぜ)()(おと)()ったかと(おも)うと、(おとこ)は「うっ!」と(こえ)()げ、ピストル()(めん)()とした。(おとこ)(みぎ)()(しゅ)()(けん)()()さった。

 ゼロは(りょう)()(ひと)()(ゆび)()わせ、(じゅつ)(とな)えた。

()(とん)(じゅつ)!」

 ゼロの()から(きょ)(だい)(ほのお)()()し、(おとこ)たちに(おそ)いかかった。

「うわぁ~、あちっ、あちちー!」

 (おとこ)たちは(つぎ)(つぎ)(いけ)()()んだ。そして、(おぼ)えてろ()って(どう)()(ほう)()げて()った。

 ゼロは(いち)(ばん)(たか)()(うえ)まで()がると、(おお)きな(まる)(つき)(なが)めた

 (じゅう)衛門(えもん)(こえ)()こえた。

――よくやった。ありがとう、(れい)()。いや、忍者(にんじゃ)ゼロよ――

 にっこり(わら)(じゅう)衛門(えもん)(かお)(まる)(つき)(かさ)なって()えた。やっと(わら)ってくれた。

おじいちゃんの(いえ)()かりが()える。(はや)(かえ)らなくちゃ。



 ()かいの()にいたせたカラスが(はね)(ひろ)げて(よる)(やみ)()えていった。

(完)


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